
生活からインスピレーションを
池谷友秀


●いい題材は生活からインスピレーションを
話が撮影の技術となると、題材の選択は大きなテーマとなるが、池谷友秀について言えば、これは特に大問題というわけではない。というのも彼は四六時中題材を探し求めているからで、彼は「普通の生活の中で、毎日題材があるはず、すべてに気をとめていれば、あらゆる事について興味がわいてくるわけで、最高の題材は生活から探し出せる」と語る。池谷友秀はこのようにリラックスした人物なのである。
彼は早くから水を題材にした撮影を行っており、この期間に彼はまた多くの水と関連する作品、あるいはほかの題材に水の要素を加えた作品を撮っている。ただ彼は水の題材は本当に難しいという。一回プールの中で潜水撮影をしたことがあるが、撮影時になってやっと周囲そこら中にゴミが漂っていることに気づき、できあがりは思った通りには行かなかったので、仕方なく撮影後に修正を行ったが、幸い最後の感覚はそんなにひどいものではなかったという。
もう一つ困難だったのは波の効果を撮影するときで、波の動きをきれいに撮影するために、超高速のシャッターを使い、かつ閃光速度の早いストロボを組み合わせて撮影する。最初は効果を表現できるかどうかいくらかやきもきしたが、思いがけないことに、効果は予想以上で、波の幅も想像以上に大きかったという。
池谷友秀はまたもう一枚別の水に関する作品を紹介してくれた。ただこの一枚は前の一枚ほど水との関わりが明らかではない。この作品は口に塗られた口紅がしっとり濡れている感覚を撮影するために、撮影の際には唇の上から一滴のしずくが流れる効果を撮影したかった。しかしタイミングを捉えるのが難しく、しずくが最も適当な位置に流れるときにシャッターを切るのは非常に難しく、すべての作業はレンズに覗きながら、カメラも見るという、2つの動作は同時進行と準備が必要だった。というのもベストタイミングはまさに一瞬で、一気に終わらせないと意味がないからである。
以上紹介した2作品に1つの共通点があるのにお気づきだろうか、これらはすべて1takeで完成しているのだ。池谷友秀は、本当に一回の撮影で終了できない写真でない限り、合成制作を選択することもあり得ない、さもなくば写真は1takeで完成させたい、この意気込みで、彼は方法を考え尽くして進めてきた。
●いい写真はカメラマンによるものではない
一枚の写真が完成したとき、池谷友秀が写真に肯定的な評価を与えるのはきわめて少ない。一枚の写真あるいは作品の善し悪しを最後に決めるのはカメラマンではなく、鑑賞する人であり、彼らが決めるべきだと認識している。もし写真に一定の原則があるとしたら、表現したいものを表現しきったら、それはすでにいい写真なのだ。
このように、池谷友秀はテーマを決める際もことのほか注意深く、1人で決めることはまれである。彼は相談が必要だと考えており、特にスタッフと話し合った後に決定する。というのもこれは1人の仕事ではなく、みんなで力を合わせた成果だからだ。それぞれの意見を聞きながら決定していくと、方向が徐々に見えてくるのだ。

●編集後記
池谷友秀の取材はとてもスムーズに進んだ。彼は協力的で、非常に気持ちのいい人だった。普段はまだ言及しないことでも、彼はすでに答えを出す。彼のように気持ちがよい人は、たぶんそのためだろうが、進むのが他の人より速く、そんなに時間をかけない。だから実力のあるカメラマンになったのだろう。取材中、彼は現在計画中の新たなプランについて語り、自らシリーズを分析してみせた。プランの中では撮影対象それぞれに、自分の手で顔に絵の具か絵を描いてもらい、それによって自分の考えを十分に表現してもらうことを要求している。これは面白い仕事で、プランはすでに着手されている。現時点では40人ほどを撮影したが、池谷友秀は100人ほど撮影したいと考えており、まだまだ目標に達していないため前進するのみだ!
池谷友秀プロフィール
池谷友秀(Tomohide Ikeya)は日本で生まれ、高校卒業後イタリア料理店でコックをし、時間があるときはダイビングを楽しんでいたが、そのダイビングをしているときに何名かのカメラマンと知り合い、撮影に興味を持ち始めた。続いて撮影のカリキュラムを学ぶことを決意、卒業後はたった2年のカメラマン助手期間を経て独立して仕事を開始した。彼の撮影の歩みは2000年からスタートし、今日に至る。以下のURLにアクセスすれば、さらに多くの作品を鑑賞できる。
http://tomohide-ikeya.com